隣の圏外さん
「なかなか難しいな」
端まで到達し、やっと足が止まった。
やっぱり花火大会の日のことがあってよかったかもしれない、と今になって思う。
この距離感は心臓に悪い。
今日が初めてだったら、周りが引くほど赤くなっていたに違いない。
「うん。なかなか難しい」
そもそも梓と私では脚の長さも歩幅も違う。
私に合わせてもらっている状態だから、梓は歯痒いと感じているだろう。
「カウントしながらやろっか。どれくらいのスピードがいいかな」
そう提案して、相談しつつ、練習を続ける。
うるさい心臓の音は、伝わっていませんように。