セカンド・ファーストラブ
化粧が終わってスマートフォンを手に取れば、璃咲から『おっけ。じゃ15時に駅前ね』と返事がきていたのでスタンプだけ送って待ち受け画面に戻った。

待ち受け画面に表示される時間に、ちょっと早いけどいいか、と立ち上がる。


淡いベージュのシフォンブラウスをインしたブラウンの膝丈タイトスカート、その上にトレンチコートを羽織って家を出た。


駅に着いて、いつも行きつけの美容室に行くときに乗る方面のプラットホームに行こうとして思い出す。そうだ、担当の美容師さんが別の店舗に移動したからいつもの電車じゃないんだった。

担当してくれる人とお店の系列自体は一緒だといえど、はじめて行く美容室にほんの少し緊張する。

電車に揺られてる間地図アプリで場所を確認したけれど、そんなことは必要ないくらい駅前のわかりやすい場所にあった。


* * *


杏寿(あず)ちゃん久しぶりだね。今日はカットカラートリートメントで間違いないよね?」

「はい、今日もお願いします」


担当の真崎(まさき)さんに鏡越しに会釈する。私が高校生だったときにカットモデルをしてくれないかと真崎さんから街中で声をかけられたことがきっかけで、真崎さんがアシスタントを卒業した後も真崎さんに担当してもらっている。

人見知りする私にとって、真崎さんの親しみやすい接客は心地よくて、センスも抜群にいいので髪のことで迷ったら真崎さんにゆだねている。
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