セカンド・ファーストラブ
「ほんと?じゃあさ、ご褒美ちょうだい?」

「え、ご褒美?」

「うん。今どこにいんの?店まで迎えに行くからさ、合コン抜け出して?」


言われた意味を咀嚼した途端胸が高鳴って、うずうずして背中がこそばゆくなる。

ありえないはずなのに、期待してしまいそうになった。


木崎くんが私にわざわざ会いに来る理由なんてわかんないし、この期待も勘違いの可能性の方が高いけど、もうなりふり構ってはいられない。


たとえ木崎くんの気まぐれだとしても、もう5年前みたいに何もしないまま終わるなんて嫌だ。



5年前、綺麗なまま終わらせたと思っていた恋はきっと完全には終わらせられずに自分でも気づかない私の奥の奥で燻っていたんだと思う。


それの続きを動かせるのはきっと自分次第。それがたとえいい結果になっても悪い結果になってしまっても、もうなかったことにはしたくない。


もう、自分が綺麗なままでいるような恋はやめる。



「───私も、会いたい」


駆け引きはできないからせめて素直に。



「ごめんなさい、急用ができたので今日は失礼します」


電話を切って席に戻るなり、そう言って五千円札をテーブルに置いて制止の声も聞かずに店を飛び出した。
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