セカンド・ファーストラブ
木崎くんにはお店で待っててと言われたけど、待ってるだけじゃ何も成長してない気がして。


木崎くんはまだ駅にいるって言ってたからお店の扉を開いた瞬間一気に駅まで走る。すれ違ったらどうしようとか、そんなことも思いつかないくらいただガムシャラに走った。


秋の夜風はほんのり冷たくて、走って熱を持ちはじめた身体に染み入るようだった。


「はあっ、」


確か駅から徒歩7分とか書かれてたお店だったから走る距離はそんなに長くないはずなのに、運動不足がたたってもう既に満身創痍。


こんなの木崎くんに見られたら笑われちゃうかな。


それでも逸る気持ちともっと早くと動く足を止められずに、その勢いのまま曲がり角を曲がった。


その瞬間、曲がり角の先から早足に歩いてきてた人と思いっきり正面衝突して、視界がその人の黒い服の色で染まる。


「ごっ、ごめんなさい、!」


いくら急いでるって言っても周り見えなくなるなんて馬鹿すぎる。申し訳なさで顔が見れずに俯いたまま謝罪した。


「いや、こっちもすみませ、って水篠?」


さっきも聞いた、癖のない聞きやすい芯のある綺麗な声に、つ、と顔が引き寄せられるようにあがった。


「き、木崎くん!?」


そこにいたのは昼間も見た木崎くんで、さっきまであんなに勢いづいていたのに、いざ木崎くんを目の前にすると失速していくようにまた緊張で支配されて意思が萎んでいく。
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