セカンド・ファーストラブ
いったい俺は水篠に何をしてしまったんだ。


水篠と今までで一番密度濃く関わったのは怪我した水篠を保健室に運んだ日だから、きっと水篠に避けられるようになった原因はその日にあるはずなんだけど。


もしかして怪我してたとはいえいきなりお姫様だっこしたのが気持ち悪かったとか?

それとも手当が下手すぎて痛かった?


あの保健室での瞬間を思い出す。手当のために跪いて水篠を見上げたとき、保健室の空いた窓から初夏の風が吹き抜けて水篠の髪が艶やかに靡いた。それがとても綺麗で神聖なものかのようで。

そんなことこっぱずかしくて言えるはずもなく、咄嗟に俯いて手当に専念することしかできなかった。水篠が俺が手当するのをじっと見つめてるのを感じて、思わず手が震えたことも覚えてる。

見られてることへの恥ずかしさと緊張はもちろん、はじめて好きになった子っていうのとさっき見た神聖さも相俟って、触れることに躊躇ってしまったから。


まさか、その震えが水篠に気づかれていた?


もしそうだったとしたら無理だ。だって絶対ださいとか気持ち悪いとか思ってそうじゃん、無理。無理すぎて今なら死ねる。


「はぁ、無理すぎ、」


ため息と同時に情けない声も一緒になってこぼれ落ちた。

< 34 / 47 >

この作品をシェア

pagetop