セカンド・ファーストラブ
「…確かに髪型変わってから華やかになったもんな」


あくまで平然とした態度のままを貫くけれど、心の内はざわついていた。

水篠は前までは背中の真ん中あたりまで伸ばしていた黒髪を一つにくくっていただけだったけど、この前肩下までばっさり切って髪の重さも変えて、それだけでも一気に垢抜けたようにみえた。まるで水篠の魅力を理解していてそれを完全に生かしたような髪型。元から綺麗だったけど、近江みたいに最近気づいた奴もいる。

これ以上は気づかれなくていいのに。

付き合ってもない、なんなら避けられてるのに勝手に独占欲を持ってる自分に引いて嘲笑する。


「やっぱり伊澄も思う?っつか水篠ってどんな男がタイプなんだろ、全く想像つかねぇわ」

「さあ。少なくとも近江ではない」

「…まあそうだろうな。でもシンプルに興味あるから聞いてくるわ!」

「は?」


興味津々そうな顔でそう言ったかと思えば颯爽と俺の前から消える近江。そんな行動力あるんなら普段からもっとシャキッとしろよ、と思うのと同時、近江にはじめて心から感謝したくなった瞬間だった。


避けられてる俺じゃ水篠に直接聞くことなんてできなかっただろうし。…悔しいけど。


水篠の席まで風の早さで移動した近江と水篠の会話をなんとか聞こうとするけど、ざわざわとした教室内では明瞭に聞き取ることはできない。ただ「最近かっこいいなって思ったのは、」という途中しか聞こえなかった。


その後何回かやり取りをしたらしい近江が満足げな顔で俺のところまで戻ってくる。

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