虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
 そんな彼の前で、娘はきゅっと唇を引き結ぶ。

「いつもお世話になってるし、ありがとうって言いたかったし、それに……」

 これ以上ないほど赤くなったアルトリシアは、なけなしの勇気を振り絞って口を開いた。

「パパ、だから」

 消え入りそうな言葉を耳にしたゼノハルトが選んだのは、感謝を伝えることでも、微笑みかけることでもなかった。

 彼らしからぬ勢いでアルトリシアを抱き締めて、自身の腕の中に引き込む。

「ゼノハルト、さん」

「パパでいい」

 短いひと言が彼の声にならない喜びの気持ちをすべて表していた。

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