虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
 なにかがおかしい――とゼノハルトが問い詰める前に、遠くで獣の咆哮が響いた。

 それが空気を裂いて消える前に、サフィがひと言だけつぶやく。

「ルブの反応がなくなった」

 普段の飄々とした笑みはどこにもない。彼はいっそ不気味なほど無表情だった。

「なに?」

 その瞬間、再びサフィの身体が溶ける。

 瞬きの間に姿を現したのは、青銀の毛並みを持つ巨大な狼だった。

「ま、魔獣……!」

 同行していた兵士が歯を鳴らしながら叫ぶ。その兵士には目もくれず、サフィは軽やかに瓦礫の山を伝い、屋根に上った。視線は今来た道を、正確にはその先の城を捉えている。

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