虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
 幸い、指輪は奪われていない。しかし彼からの応答は変わらずないままだ。

 また、ティトも人間に戻れないだけでなく具合が悪そうだった。腕の中で力なく目を閉じるティトを心配し、アルトリシアは泣きそうになりながら彼の身体を掻き抱く。

(怖いよ。誰か助けて……。パパ、サフィ……)

 離れ離れになったふたりは今、ここにいない。彼らもどうなっているのか、連絡を取り合えるはずのルブから反応ないため知る手段がなかった。

 すると、そこに足音が響いた。冷たい石畳に落ちる硬質な音はアルトリシアのいる牢獄まで近づき、やがて立ち止まった。

 顔を上げた彼女の前に、明かりに照らされた男がぼんやりと浮かぶ。

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