虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
「私のパパはひとりだけだもん!」

 感情のまま吐き出したアルトリシアの頬に涙が伝う。

 マイネスが苛立たしげに舌打ちして、牢獄の鍵を開いた。泣きながら怒る彼女を見下ろし、肩を強く掴む。

「お前の本当の父親はあんな男じゃない。お前は神子として我が家に戻ってくるんだ」

「私は神子なんかじゃない!」

「神子じゃなかったのはメルニエラなんだよ、アルトリシア。本物はお前だったんだ」

「違う――!」

「いい加減にしろ!」

 乾いた破裂音がして、アルトリシアの小さな身体は牢獄の床に吹き飛んだ。頬を強く張られたのだと気づいたのは、口の中にじわりと血の味が広がってからだ。

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