虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい
番外編:幼女、夢を見る
甲高い笑い声が逃げるアルトリシアの背中を追いかける。
息を切らして走る彼女の真横を、握りこぶしよりひと回り大きい炎の球が通り抜けていった。ちり、という微かな音がした直後、髪が焦げる嫌な臭いが鼻をつく。
頬に感じた熱にぎょっとしたのも束の間、少し先を花壇に火球が飛び込んだ。空に向かって咲いていた可憐な花が、残酷にも炎に呑まれて燃えてしまう。
あとほんの少し位置がずれていたら、燃えているのはアルトリシアだった。
「いつまでもねずみみたいに逃げないでよ! 練習にならないでしょ!」
再び魔石を握り締めて笑ったのは、アルトリシアの妹、メルニエラだ。