檸檬色の日々
この熱を彩って
幼い頃、原因不明の高熱で生死を彷徨った。
その時に見た夢は触れたものの感触や温度が伝わってくるほど鮮明で、あまりにも事細かに映像として流れてきたから今も何ひとつわすれられない。
大聖堂の尖塔や鐘楼が目立たない程の高層建造物が多く、西洋の絵画で描かれているような街並み。
夢のなかの私は、当時高校生だった姉と同じくらいの背丈をしていた。
整える術を持っていないためただ長く伸びた白髪。目は砂色。肌は青白く、不健康に紫がかったくちびる。
爪は短く揃っていて服は質素。両親はいないようで、家主から食材や衣類を分けてもらうことができないのか、家事の合間に朝夕関係なく掃除や調理の仕事をしていた。
そんな私を「アンタ」でも「お前」でも「カラレス」でもなく「サン」と呼ぶひとがいた。
柔らかいけど低い。
優しさを帯びていることは、その声を聴けばすぐにわかった。
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