檸檬色の日々
カラレス、は何かの言葉を略しているようで、私以外にも呼ばれている存在がいくつかいた。
それらは髪の長さや服は違えど私と似た容姿をしていて、少し不気味に感じた。
見る周りの目は冷ややかで居心地が悪い。
嫌な夢だ、と思った。
だけど、その感情も、ひまわり畑へたどり着けば拭われる。
お昼休憩の限られた時間に行くから、往復の移動のせいでその場で会えるのはいつも5分程度だ。それでも彼はうれしそうに、楽しそうに、私との時間を過ごしてくれた。
「サン、…これ、やる」
ヒカリがぶっきらぼうな態度で渡してきた大きな箱の中身はひと目見て高価な服だとわかった。手触りが良く、繊細な刺繍が施されている。
もらえるわけない、と首を横に振ると彼は子供のようにふてくされた顔を浮かべた。
「こんな綺麗なものを私が着てたらおばさまたちに変に思われるわ」
「そんなことねーよ。美しい者が美しいものを着ることは何も変じゃない」
美しい。
私が彼を褒めるようなことを言うときは決まって冷たい態度で照れを隠すのに、反対のときはいつも恥じらいもなく真っ直ぐだ。
曇りのない、疑わなくても充分なほど伝わってくる愛情にあふれた言葉。
照れているわけじゃなく、それを真っ直ぐ受け止めることができない自分。
だって…バケツの水で何度も自分の姿は確認した。とても美しいなんて思えない。みすぼらしい格好で、顔色も悪く、疲れが溜まっているのか身体も軋む。