檸檬色の日々
彼は口は悪いけれど、いつも品のある身なりをしていた。
身分が高い人なんだと思う。
どうしてそんなひとと私が知り合って、ひそやかに此処で会い、くちづけを交わしてるんだろう。
夢のなかで、また夢を見ている気分だ。
「それにおれはサンに似合うと思って買ったんだ。つべこべ言うなよ」
彼はそんなこと何ひとつ思っていないみたいで、強引なのに優しくて、とてもまぶしい。
「ありがとう……だけどもったいないから、大切にしまっておくわ」
「…じゃあ此処でだけ着て見せて」
「っ、え!?」
「それくらいいーだろ。ほら、目つぶって待っててやるから。早くしないと時間過ぎるよ」
確かにひまわりは背が高いから、周りからも見られなそうだけど…。
狼狽える私を見て彼が笑う。
そんなふうに意地悪く笑われても、八重歯が可愛いからこわくない。
「後ろ、外すからあっち向いて」
「あ、う、うん」
髪をかき分けられ、ワンピースの後ろのボタンをみっつ開けられる。
心臓がうるさい。彼に聴こえてしまわないか心配になる。
「サン、着替えないならおれが着替えさせてもいーけど」
「そ、それはだめ!」
それは心臓がもたない。
慌てて振り返って、今度はヒカリに後ろを向かせる。目も閉じていてね、と念を押しながら。