檸檬色の日々
彼は楽しそうに笑っている。
……どうしてこのひとは私のことをカラレスと呼ばないんだろう。
他のひととは違って、温度のある瞳で見つめてくれるんだろう。
おそらく身分違いのプレゼント。
似合わない。相応しくない。それでも、ヒカルが私に選んでくれたもの。そう思うと、本当は、袖を通したくてたまらなかった。
着替え終わって彼の顔を覗くとちゃんと言う通りに目を閉じてくれていた。
まつげが長く、筋の通った鼻。整った輪郭に長めの髪がかかる。
美しいは、このひとへの言葉だ。
背伸びをして赤いくちびるに触れる。
「キス魔」
すぐに離れようとすれば高等部を固定され、八重歯に噛みつかれるようなくちづけをされた。
──── 離れたくない。
このまま帰りたくない。
一緒にいたい。
このひとと生きたい。
ヒカリにとってどうかは知らないけれど、私にとっては、口が裂けても、死んでも、絶対に言うことのできない気持ちを飲み込むためのキス。
しばらく経ってくちびるを離した彼は私の姿を見て目尻を落とした。
「やっぱり、サンは美しいな。何よりも…誰よりも」
きっともらってはいけない言葉。
キスなんてしてはいけない相手。
夢のなかで、何も細かなことはわからないはずなのに、切なくてたまらなかった。