野球とソフトボール
彼は人気者で、イケメンで性格もよくて、凄いモテる人で。
私みたいなモテない、何もかも平凡で顔も並み以下のクラスメイトには高嶺の花なんだけど。
本当に、自慢できるのはソフトボールだけ。
女子力も低いんだけど。
でもね、もう溢れちゃったの。
貴方が、折角しっかり閉めた蓋を開けちゃったから、とめどなく溢れちゃうの。
だからね。
「わっ、私も!すっっ、好き!
前から、好きだった‼︎」
泣き笑いで、伝える想い。
今、酷い顔をしている自信がある。
驚いた表情で、暫く固まっていた徳永くん。
「お前、も……?」
ボソっと呟いて、その言葉が彼自身を満たしていくように見えた。
私は、精一杯の笑顔を向ける。
大好きだよって、伝えるために。
内心ではまだ信じられなくて、夢の中にいるような気分だけど。
溢れ出た気持ちは、表情に出てしまう。
涙が、一筋頬を伝わった。
自然に彼の手が、私の頬に伸びた。
「……そっか。……そうかぁ……」
そう呟きながら私の頬に触れて、親指で涙を拭って。
徳永くんは、一生忘れられないような美しい笑顔を私に向けた。
「俺と付き合って、春日 葵」
「うん………!」
幸せそうな彼と、照れながら泣きじゃくる私を、夕陽の最後の光が優しく照らしていたーーーー
fin