野球とソフトボール
おまけ 



「ーーで?何で俺を避けてたわけ?」


付き合うことになって2週間ほど経った、初デートの日。
抜けるような青空の下、手を繋いで公園を散歩していた時。

何の脈絡もなく、徳永くんが聞いてきた。

揶揄うような視線に、私は慌ててそっぽを向く。

「…ナイショ」
「へぇ、俺たちの仲に隠し事を作るんだ?」

ーーーこれは、絶対分かってる!
分かってるくせに、私に言わせようとしてる‼︎

「分かってるくせに」

私が拗ねて言うと、彼はそれは楽しそうに笑い声をあげた。

そして、あの日から、人目の無いところで時々見せる甘い視線と声で、こう言うのだ。

「お願い、教えて」


はい、無理です。全面降伏。
この彼に、逆らえる気が全くしません!


「す、きだって気がついちゃったから」

「何?よく聞こえない」

「だからっ!
徳永くんが好きだって気がついて、それがバレるのが怖くて、避けてたのっ‼︎
絶対振られるし、嫌われると思ったから‼︎」


一気に叫んだので、酸欠になりそう。
はあはあと肩で息をしつつ、上目遣いで睨む。
よくもこんな恥ずかしいことを言わせたな‼︎


帰ってきたのは、もう神々しいほどカッコいい、イケメンの微笑み。
悔し紛れに、私は言葉を継いだ。

「ーーー満足?」
「そりゃもう」

嬉々として、鼻歌混じりに歩き始める徳永くん。
ーーー私は、もう付き合う限り、連戦連敗なんだろうなぁ。

少し凹んでいると、そっと彼が呟いた。

「本当に、幸せだ」

えっ、と思って見上げると、首まで赤い彼の横顔。

「一生、葵に勝てる気がしない」


一生、一緒に居てくれる気があるんだ。
私も、自然と笑顔になる。

私達、まだ高校生で。
たくさんの良いことと、たくさんの悪いことがあるだろう。

もし、うまくいかなかったとしても。
今、この瞬間の、この気持ちは。

この空の青さと一緒に、ずっと覚えていれたらいいなと思ったーーー




          fin
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