篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
その日の夜、仕事から帰ってきたクソ親父に問い詰めて、また言い合いになり外に追い出された。
はぁ……最近アイツらと顔を合わせれば、
喧嘩しかしてなくて嫌になる。
それもこれもクソ親父が俺の話を聞かず、『塾に入れ、勉強しろ』としか言わないのが悪いんだよ。
『お前の将来のためを思って言ってるんだ!!
言うことを聞け!』
怒鳴られた言葉が頭をよぎる。
俺のため?はっ、笑わせるな。自分のためだろ?
自分がここまで育てたんだって自慢して、賞賛されたいのが見え見えなんだっての。
しばらく家に帰る気になれなくて、歩いてすぐにある公園のブランコに腰を下ろした。
くしゅん!
……あー、さすがに薄いパーカー1枚じゃ寒いな。
でも、このまま帰るのは癪に障る。寒さに震えながら1人でぼーっとしていると、遠くから灯りが見えた。
あれは兄貴……?
スマホを使って、ライトで暗闇を照らしてる兄貴がいた。
俺がいることに気づき、ゆっくりと近づいて隣のブランコに座る。
「慧、ここにいたのか。探したよ。帰りたくない気持ちは分かるけど、ずっとここにいたら風邪引くぞ」
優しい笑顔と肩に掛けてくれたジャケットの温もりにホッと安堵した。
「兄貴……部屋で勉強してたんじゃないの?」
「下でお前と父さんが大喧嘩してたら、
そりゃ気になるだろ。声が丸聞こえだったからな。気づかれる前に戻れば大丈夫だ」