篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
また俺が追い出されたと思って、勉強を中断してまで探しにきたってことか。
兄貴は昔から、俺のことをずっと気にかけて自分は後回しってタイプだったな。
少しの間沈黙が流れた後、兄貴が重々しく口を開く。
「俺も中学入ってすぐに塾に入れられたよ。学校から帰ってきたらそのまま塾に行って、夜まで勉強の毎日。慧も同じ目に遭うと思う」
これから俺に訪れる未来に嫌気が差し、
大きなため息をついた。
成績が悪かったならまだ納得できるけど、
なんでそこまで強制されないといけないんだよ。
「親父は自分勝手が過ぎると思わないか?」
「そうだな……お前だけでも友達と遊ばせてやりたいと思ってるんだ。
俺が説得しようとしても、無駄口を叩く暇があったら勉強しろの一点張りで。力になれなくて悪い」
「兄貴は無理やりやらされて嫌じゃねえのかよ!?
俺はアイツの言いなりになりたくない!」
とてつもない怒りで、拳にぎゅっと力が入る。
親のエゴのせいで、自由を奪われるなんて嫌だ。
「……俺だって最初は抵抗したり、家出しようとした。でも、すぐに連れ戻されるしどうやっても逆らえない。
外面がいいから、みんな父さんに騙されてる。まだ子供の俺たちじゃ、大人相手にどうしようもできないんだよ」
「…………」
兄貴の完全に諦めたような表情を見て、それ以上は何も言えずに押し黙る。
やるせない思いを抱えて、渋々家に戻った。