篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
「――天音のこと、いつか兄貴に紹介したいんだ」
「え……?」
「それに、天音にも兄貴に会ってほしくて」
まさかの提案に、思わずパチパチと目を瞬かせる。
慧くんのお家にお邪魔した事はもう何回もあるけど、まだご両親にもお兄さんにも会えてない。
あの家は1人で住むには、確かに大きいし広すぎると思う。
一方、慧くんは私と付き合ってからもう一度家に来て、私の両親には挨拶を済ませていた。
うちの親が好きそうな、真面目で爽やかな好青年って感じだから一目見て気に入られてたんだよね。
まぁ、それは置いといて。
「今すぐじゃなくていいよ。
兄貴がこっちに帰って来る時でいいから。
……天音に出会うまでの俺は親とのしがらみが切れなくて、ずっと悩んでた。
もうとらわれる必要はない、って気づかせてくれてマジで感謝してる。ありがと」
ああ、よかった。
私のありふれた一言でも、慧くんのためになれて。
今の慧くんの表情は晴れやかで、もう完全に吹っ切れた様子。私も自然と笑顔になる。