篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。



開いた口から出たのは本来言おうとした言葉じゃなくて、心の中をぐるぐると巡っていた言葉だった。

建て前と本音の言葉が入れ違ってしまった状態。


そんな漫画みたいなことをしちゃうなんて思ってもいなかった。

も~~、すぐに慌てるのどうにかしなきゃ……!


しかも、好きだってちゃんと言葉にして言うのは告白の返事をした日以来で、恥ずかしさのあまり顔を赤くしたまま両手で口を覆って、視線を泳がせる。


直前に「間違えた」とか誤解を招く言葉をうっかり言ってしまったせいで、事情を説明せざるを得ない。


「あの……」

「うん」

「私も、お兄さんに挨拶したいって言おうとして、心の中でいっぱい好きって思ってた言葉が、間違って、その……出てきたのです……」

「…………」


うわーっ、我ながら間抜けすぎて恥ずかしい! 

慧くんの沈黙がさらに羞恥心を煽ってきて、走ってこの場から逃げてしまいたい気持ちでいっぱいになる。


「天音」

「……はい」


「はぁ……可愛いのも大概にしろよ。
俺の彼女がこんなに可愛い……」

「えっ??」


押し留めていた物が一気に放出されるように、沈黙を破ったかと思えば「はぁ〜〜〜っ」という長い溜め息を吐いた。

その発言で私は一層顔が真っ赤になったけど、慧くんもちょっと頬が赤くて、まるでにやける口を隠すように口元を片手で覆っている。

と、とりあえず引かれてはいない……よね?

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