篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
「いや、キスした後甘かったから気になって」
……絶対リップクリームのことだ。いつもは薬用を使ってるんだけど、たまたま新しく買ったのを試しに塗ったばかりだったんだよね。
つまり、唇を舐めたってこと?
なんか、面と向かって言われると恥ずかしい。
「あ、あのね。あの日私はちみつ味のリップクリームを付けてたから甘く感じたんだと思う」
「あー、そういうことか」
「他にもスイーツ系の甘いリップ付けてる子いるから、珍しくはないよ。ていうか、篠宮くんキスし慣れてそうだから知ってると思ってた」
「キスはしたことあるけど、今までしたのと全然違ってて、何ていうか……甘くて心地よくて、ずっと触れてたいと思った」
まさか篠宮くんの口からそんな言葉が聞けると思わなくて、ものすごく動揺してる。
これって喜んでいいんだよね?
しかも、ずっと触れてたいって……えっ!?
夢でも見てるの?
軽くパニックになってるのも御構い無しに篠宮くんが椅子から立ち上がり、ゆっくり近づいてくる間吸い込まれそうな澄んだ瞳から逸らせなかった。
「………倉科」
「……っ!」