篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
止めて欲しいと縋るように、目の前の胸元へと手を伸ばしてブレザーをキュッと握れば、再びこちらの反応を伺うように、少し角度を変えながら唇が押し当てられた。
違う、逆だよ!
くっついてた時間は短かったけど、一瞬一瞬がスローモーションみたいに長く感じて、ようやく離れていった熱にゆっくりと閉じていた目を開く。
「…………」
ゼロに近い距離で、視線が絡み合った。
篠宮くんの少し困ったような色気のある表情が露になり、吐息が僅かにかかって顔が真っ赤に染まる。
私だけ翻弄されっぱなしで、初心な自分が嫌になってきた。
「……思ってた以上に良かった。癖になりそう」
途方に暮れたようにポツリと零された言葉。
それは、都合よく解釈してもいいの……?
ガラッ
「どうだ、全部終わったか?」
「………!!」
現実に引き戻すような担任の声に、ハッとして慌てて体を離した。
今の見られてたんじゃないかって冷や汗かいたけど、セーフっぽい。
一体どれだけの間、触れ合っていたのか……もし見られてたら恥ずかしさで死ぬ……!
「量多かったか?」
「いえ、大丈夫です。俺らでやっておくので」
「そうか、悪いな。じゃ、出来たら職員室に持って来るように」
先生が出ていった後、しばらく沈黙が流れる。
あ……危ない、危うく雰囲気に飲まれるところだった!!