篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。


すると、篠宮くんは唐突に手のひらを差し出してきた。

「リップ、貸してみて」

「へ?」


意図が分からなくて、きょとんと篠宮くんを見上げる。

なんだろう、物珍しそうだから見てみたいのかな?


特に断る理由もないから、スカートのポケットからリップを取り出し、差し出されていた大きな手の平にポップなデザインなリップを置く。

篠宮くんは蓋を外すと、ほんのりパインの匂いを纏ったクリーム色のリップ先端をこちらに向ける。

私の顎を持ち上げて、少しずつ端正な顔を近づけてくるからドキッとした。


「えっ、なに!?」

「塗ってあげるな」


篠宮くんは爽やかな微笑みを口角に浮かべると私の唇に、ちょんと押し当てる。


「俺のせいで、とれちゃったから」

「……っ!いいよ、自分で塗るから!」


「終わるまでじっとしてて」


恥ずかしくなって逃げようとしたけど、篠宮くんが真剣な表情でリップを塗っているから動けないよ。

うう、大人しく塗ってもらうしかないのか。

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