篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
「塗ったお礼ってことで、もう1回キスさせて」
「……だめ、リップ塗った意味ないじゃん。また取れちゃうよ」
「また塗ればいいだろ。だめか?」
「もう、しょうがないなぁ」
篠宮くんが慎重に伺うように聞いてきた。
子犬のような表情に流されて、またキスを許してしまう。
篠宮くんに何かしてもらったら、そのお礼としてキスをするはずがどんどんとお礼の意味を成さなくなりそうだな。
辛うじて断った言葉も、ハの字に眉を下げて懇願するような声色でもう一度聞かれてしまえば決意が簡単に揺れた。
「ほんとに、今回だけだからね?」
次こそ、次こそはちゃんと断らないと!
篠宮くんのファンに睨まれちゃう。
結局許してしまったその言葉に、ふわりと篠宮くんは嬉しそうに笑って、私の唇にもう一度触れてきたのだった。
ーーまだまだ私は、こんなにも振り回されている。