篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
「篠宮くん……」
同じく昇降口へ来ていた篠宮くんと、ばったり鉢合った。
「傘持ってきてないのか?」
「う、うん」
篠宮くんの視線が雨の降る外へ向き、次に私の何も握られていない手元を見て、それから自分の手に持ったビニール傘へと移る。
その視線の動きで、何を言われるかを察した。
心臓がドクドクと煩く鳴るのを感じながら、無言で見守る。
「……よかったら、傘入ってく?」
「えっ、そんなの申し訳ないよ!止むまで待つから平気!」
「すげーどしゃ降りでぜんぜん止みそうにないけど。待ってたら帰れないんじゃない?」
「う、確かにそうだね……」
篠宮くんの言う通り、雨は止むどころか勢いを増している。
このまま待ちぼうけするよりは、お言葉に甘えた方がいいのかも。
「じゃあ……お願いします」
「うん、倉科の家ってどこ?」
「歩いて20分くらいかな」
「んー、徒歩か。俺は電車通学だから、同じだったら駅まで一緒に行こうと思ってたんだけどな」
どうしようか悩んでいる様子。
私の家は駅を通り過ぎた場所にあるからなぁ。
なるべく篠宮くんに迷惑をかけずに済む方法はないか……あ、そうだ!