篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。
……またどこか悲しそうな、諦めてるような顔してる。
滅多に見せない表情にズキッと心が痛んだ。
人の家庭事情に首を突っ込むような真似はするつもりないけど、私にできることがあれば力になりたいよ。
いつか聞ける機会があったら、聞いてみたい。
ぼーっと突っ立っていると、部屋着の裾を結音に引っ張られた。
「けーくん頭いいんだって!俺、教えてもらっていい?」
「私も!!」
おお、いつのまにか仲良くなってる!
誰とでも仲良くなる結音はまだしも、心音も人見知りしてない!
それだけ、篠宮くんが打ち解けやすいんだろう。
「いいよ、でも篠宮くんも帰らないとだから長居させたらダメだよ」
「分かってる!」
「じゃあ、篠宮先生よろしくお願いしますっ!」
「先生とか、そんなたいしたものじゃないって」
少し照れくさそうに笑ってる。
もう先生って呼んでいいレベルで、よく教えてもらってるもん。
私は1人でカレーを食べながら、真面目に宿題をする心音と結音、傍で丁寧に教えている篠宮くんを見守っていた。