【完結】最高糖度のキミが好き



 言われていた時計台の前に辿り着くと周囲はカップルで埋め尽くされていた。大粒の雨は降っているけれど、週の終わりの金曜日だからか学生や会社員っぽい人たちと色んな年齢層で賑わっている。



 色とりどりの傘を見比べ辺りを確認していくと、明らかに一般人とは思えないスラッとした立ち姿で、真っ黒の傘をさす人影が見えた。



 日野くんだ。



 てっきり変装とかしているものだとばかり思っていたけど、制服にマスクをつけているだけだ。傘で顔を隠しているためなのか周りが気付く様子はない。どう声をかけようか迷っていると、彼がこちらに気付いた。



「あ、五十嵐さん。ありがとう来てくれて」

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