【完結】最高糖度のキミが好き


 彼が私にペンケースを渡したのは親切心で、疾しいことは何もない。けれど万が一私にペンケースをあげたなんて噂がたったら、彼にはマイナスイメージになってしまう。特別扱い、なんて言う人も出てきてしまうだろう。



 安心してもらう為に私は大丈夫と何度も頷いた。しかし何故か彼はさらに顔を暗くし、俯いてしまう。



「日野くん?」



「噂とかはどうでもいいんだ。でも俺、職業柄他人に好意を持たれることが多くてさ……一方的に。だから五十嵐さんと噂になるのが嫌なんじゃなくて、俺がペンケースあげたって知った周りの人間が、五十嵐さん攻撃し始めるのが嫌で……。それは分かってほしい」



 日野くんはぎゅっと眉間にしわを寄せながら私を見た。確かに彼はクラスでも人気だし、ほかのクラスの人たちが見に来ることもよくある。大変な思いをしてきたんだろう。私にお弁当作りを頼むくらいだし、自分が関係ないところで人同士が揉める、なんてこともあったかもしれない。


< 160 / 586 >

この作品をシェア

pagetop