【完結】最高糖度のキミが好き
そんなことはしない。絶対に。しかし日野くんは本気で思っているらしく心底苦しそうに話をしていて私は慌てて首を横に振った。
「ち、違うよ! 籍ってけ、け、結婚ってこと?」
「そうだよ。五十嵐さんが日野になるか、俺が五十嵐になるか。一緒に住んで、家の中も外も離れずに、毎日幸せに暮らすのが結婚だよ。子供を育てる夫婦もあるね。俺は子供は五十嵐さんが辛くなるなら普通にいらないかな。五十嵐さんが子供欲しくて、安全に生まれたらそれはきちんと育てるけどさ。浮気のことを不倫って呼び方になって、不倫したら裁かれるんだよ。悪いことだからね。本当に悪いことだから、罰を受けなきゃいけなくなるんだ。妻や夫を誑かした人間をね」
「いやそういう仕組みの質問じゃなくて、え、えっと……それはプロポーズ的な、その」
「嫌だな、プロポーズはしっかり、ちゃんとした場所で、しっかり準備した上でするよ。五十嵐さんが他の……にとられないように……じゃなくて、今、勝手に入籍されるのとか増えてるみたいでさ、俺商売柄そういうの怖いじゃん? 怖いよね? だから早めに籍入れておきたいんだよね。俺は五十嵐さんしか好きじゃないのに、他の人間と結婚するなんて絶対嫌だよ。そんな事されたら相手殺すんだけど。呪われた血だから家族ごとね。絶やさないと。ね、嫌じゃない? 五十嵐さんが俺と結婚しないと、俺人殺しだよ? ね、俺を助けると思って、お願い! あっそうだ。一緒に住む前には、勿論五十嵐さんのご両親にも挨拶したいんだ。だって不安でしょ? 五十嵐さんのご両親も、自分の娘が知らない奴の家に住むようになったら怖いでしょ? ね、突然結婚しますって言ったらびっくりさせるからさ、実際に会う挨拶は、出張中で無理なのは分かってるから、テレビ電話とかで話せないかな、そういえば明日午後は暇? 俺は明日フリーなんだよね。元々の予定は五十嵐さん家に連れてって明日はずーっと外出さない気だったから空いてるんだ。ねえ、五十嵐さんは暇? その時に電話しようよ。これからのこと、五十嵐さんのお母さんとお父さんとお話しさせて。ちゃんと挨拶出来るから。あっ明日は一緒に帰ろ。俺の家に。撮影は明日無いし、朝に一回俺外出て合流した感じで戻ってくるから。帰るときは……確か宿泊体験の解散の駅って確か駅ビルになってるとこだったし、そこの三階とかその辺りで待ち合わせしよ。そっから一緒に地下降りてタクシー乗って帰ろ。ね? それでどうかな五十嵐さん。五十嵐さんはどうしたい? 疲れてるかな? 駅ビルの最上階レストランだけどそこで食べる? 近くにホテルあるけど泊まる? 俺金なら結構あるんだ。両親死んでるし、モデルの仕事とかでお金あるし。それに業者に急ぎで作らせる必要なくなったんだよ。五十嵐さん閉じ込め部屋。部屋の半分鍵付きの鉄格子つけてさ、もちろん窓側ね? 開かないから安心して、逃げようとして落ちたら危ないもんね。二十五階から落ちたら死んじゃうよ。下にクッションとかあっても。即死だよ。ぞっとするね。絶対逃がさないよ。どこにも。五十嵐さんは死ぬまで俺と一緒にいてもらうんだから」
日野くんが捲し立てるように話す。なんだかわりと私と同じくらいパニックみたいになってない? 気のせいだけどすごく興奮している気がするし、こっちの日野くんも初めて見る気がしてならない。