あなたに巡り会えてよかった…
3回呼び出しがなったところで彼が電話に出た。

「あ、あの…私…」

「あの時の子だよね?!」

「はい。」

「電話ありがとう。すぐに電話が来ないからあのあと後悔してたんだ。どうしてすぐに話しかけなかったんだろうって。あの時もどうして名前も聞かなかったんだろうって。」

「…」

「君のことが忘れられなくて、また話したいと思っていたのに成田で連絡先さえ聞けなかった。ずっと後悔していた。俺ヘタレだなって思ってた。」

「私も会いたいなって思ってました。あなたは私をすくいあげてくれたんです。今こんなに元気なのはあなたのおかげなんです。でもあの時は連絡先を聞こうなんて思いもよらなくて。」

「俺は阿部樹(あべたつき)。君は?」

「西島未央です。」

「明日会えないかな?仕事なら終わる時間でもいいんだ。話せない?」

「久しぶりに連休なんです。明日はお休みなので大丈夫です。」

「じゃ、明日12時に新宿でどうかな?」

「大丈夫です。どこから来る?改札で待ち合わせにしよう。」

「私京王線です。」

「わかった。じゃ、京王線の西口の改札で待ってるから。」

「はい。」

「また明日!」

「また明日。」

電話を切ってもまだドキドキしている。
久しぶりに聞く彼の声に喉の奥がまたギュッと締まる。

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