あなたに巡り会えてよかった…
11時30分…
家にいても落ち着かず早く出てしまったのでもう到着してしまった。
30分も早いなんて、と自分でも笑える。

新宿の改札に向かうと彼が立っていた…
ウソ。

昨日のスーツ姿とは変わり、バリで会った時と同じようにラフな姿。
でもリゾート感は無くなってシャツに黒いパンツを合わせている。

私を見つけると笑いながら手をあげている。

私は慌てて改札を出た。

「早かったね。」

「阿部さんこそ…まだ30分早いですよ。」

「昨日から居ても立ってもいられなくてさ。こんなことなら昨日強引に会えばよかったと思ってたよ。」

「フフフ…私もなんだか落ち着かなくて。まさか日本で会えるなんて思っても見なかったから。」

「あれから元気にしてた?」

「はい。だいぶ元気になりました。もう泣かなくなりました。」

「そうか…。あのあとどうしてるかな、とずっと思ってたんだ。だから昨日君を見かけて心底驚いたよ。」

「私はいつも旅行記を読んでいて、たまたま新作を買いに行ったらサイン会してるって聞いて。で、並んでいたら、アレ?アレ?と思って。本当に驚きました。」

「いつも読んでくれてるの?ありがとう。」

「いつも私まで行った気になってみたり、穴場スポットが書いてあったりするから私、実際に行ってみたりしてるんです。」

「マジか。めちゃくちゃ嬉しいよ。俺の趣味が高じて出してる本だからリアルな感想で嬉しい。」

「好きな作家さんが阿部さんだったなんて驚きました。」

「少し歩かない?」
阿部さんに誘われ新宿御苑へ来た。
あのまま駅で話し込んでしまうところだった…。

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