あなたに巡り会えてよかった…
「2人でまた寝ちゃったな。ビーチで寝るといくらでも寝れちゃうな。」
と何事もなかったかのように話しかけてくれる。
彼の心遣いに彼の懐の広さを感じる。
「ありがとうございました。ビックリさせてしまって本当にごめんなさい。過呼吸になるなんて初めて…。」
「そうだったんだね。大丈夫??」
「はい。だいぶ落ち着きました。驚かれましたよね。」
「驚かなかった…と言ったら嘘になるかな。ごめんな。」
「そんなことないです。驚いて当然です。本当にごめんなさい…ドーナツがダメになっちゃいましたね。」
ビーチに放り投げられたドーナツは砂だらけでもう食べられそうにない。
「ドーナツはいいよ!そんなのは。君が大丈夫ならいいんだ。」
「ありがとうございます。」
「それより…俺は君に何か言っちゃったんじゃないかと思って。ごめんな。」
「大丈夫です。私が思い出して苦しくなっただけなんです。」
「…」
「実は半年前に両親を事故で亡くしてしまって。私はひとりっ子なので誰もいなくなってしまったんです。いつも旅行にばかり連れて行ってくれる両親でした。今回は私の仕事の都合で行けなかったので『気をつけてね!』と送り出したのが最後でした。翌日には両親はもう冷たくなっていて…。」
「…」
「あまりに急に逝ってしまったので心の整理がつかなくて…。私はまだ親孝行をなにもしてなかったんです。両親からはあんなに沢山の愛情を注いでもらったのに返せてないんです。それなのに返したくても両親はいなくて。1人は寂しくて、仕方ないんです。」
「うん…」
「海の中のように誰の声も聞こえないんです。まるで世界に1人取り残されているよう気さえするんです。仕事をしていても気持ちをどこかに置き忘れてしまってるようで…。」
「うん…」
「友達も同僚もみんな優しくしてくれるんです。でもどこか一歩引いてしまう私もいて。もともと1人は苦じゃなかったんです。一人旅も好きなんです。でもそれって両親の支えがあってのものなのかもしれません。旅行に行っても家で待ってる人がいるという安心感なのかもしれません。けど今回はなんだか帰っても待っててくれる人がいないんだと思ったら寂しさが波のように打ち寄せてきて。」
「だから君は心が疲れてるように見えたのかな…。癒してもらいにここにきたんだね。神様たちにパワーをもらいにきたんだね。」
「そうですね。誰かに助けて欲しいってことなのかもしれないですね。身近な人たちは実質的に助けてくれるんです。でも心の奥底はまだまだ正直不安定で…。」
苦笑いをする私の背中をまたトントンと軽くリズム良く叩く。
「無理して笑わなくていいよ。泣いたっていいじゃない。そのためにここにきたんでしょ?異国に来て心を解放させてあげないとまたいつか辛くなっちゃうよ。俺の前で泣いたって忘れちゃうからいいじゃん。」
「…」
「頑張らなくていいんじゃない?泣いて心を休ませてあげなよ。自分をもっと大事にしてあげて。」
うん…うん…
また涙が出てきた。
彼はずっと私の背中をトントンしてくれる。
だんだん嗚咽が漏れてくる。
声がどんどん大きくなり、しゃくりあげてしまう。
彼のシャツを私の涙でどんどん濡らしてしまう。
でも涙を止めることができない。
この半年、こんなに泣いたことはない。
悲しいけれどやらなければならないことが多すぎた。
悲しんでばかりではいられなかった。
2人の死を受け入れられない自分もいた。
どれだけ泣いていたのだろう…
やっと心の底から2人の死を悲しみ、声に出すことができたのかもしれない。
私はヒック、ヒックとまだ嗚咽が止まらないでいる。
そんな私の背中を変わらずトントンしてくれていた彼が小さな声で「君はひとりぼっちじゃないよ。」というのが聞こえた。
と何事もなかったかのように話しかけてくれる。
彼の心遣いに彼の懐の広さを感じる。
「ありがとうございました。ビックリさせてしまって本当にごめんなさい。過呼吸になるなんて初めて…。」
「そうだったんだね。大丈夫??」
「はい。だいぶ落ち着きました。驚かれましたよね。」
「驚かなかった…と言ったら嘘になるかな。ごめんな。」
「そんなことないです。驚いて当然です。本当にごめんなさい…ドーナツがダメになっちゃいましたね。」
ビーチに放り投げられたドーナツは砂だらけでもう食べられそうにない。
「ドーナツはいいよ!そんなのは。君が大丈夫ならいいんだ。」
「ありがとうございます。」
「それより…俺は君に何か言っちゃったんじゃないかと思って。ごめんな。」
「大丈夫です。私が思い出して苦しくなっただけなんです。」
「…」
「実は半年前に両親を事故で亡くしてしまって。私はひとりっ子なので誰もいなくなってしまったんです。いつも旅行にばかり連れて行ってくれる両親でした。今回は私の仕事の都合で行けなかったので『気をつけてね!』と送り出したのが最後でした。翌日には両親はもう冷たくなっていて…。」
「…」
「あまりに急に逝ってしまったので心の整理がつかなくて…。私はまだ親孝行をなにもしてなかったんです。両親からはあんなに沢山の愛情を注いでもらったのに返せてないんです。それなのに返したくても両親はいなくて。1人は寂しくて、仕方ないんです。」
「うん…」
「海の中のように誰の声も聞こえないんです。まるで世界に1人取り残されているよう気さえするんです。仕事をしていても気持ちをどこかに置き忘れてしまってるようで…。」
「うん…」
「友達も同僚もみんな優しくしてくれるんです。でもどこか一歩引いてしまう私もいて。もともと1人は苦じゃなかったんです。一人旅も好きなんです。でもそれって両親の支えがあってのものなのかもしれません。旅行に行っても家で待ってる人がいるという安心感なのかもしれません。けど今回はなんだか帰っても待っててくれる人がいないんだと思ったら寂しさが波のように打ち寄せてきて。」
「だから君は心が疲れてるように見えたのかな…。癒してもらいにここにきたんだね。神様たちにパワーをもらいにきたんだね。」
「そうですね。誰かに助けて欲しいってことなのかもしれないですね。身近な人たちは実質的に助けてくれるんです。でも心の奥底はまだまだ正直不安定で…。」
苦笑いをする私の背中をまたトントンと軽くリズム良く叩く。
「無理して笑わなくていいよ。泣いたっていいじゃない。そのためにここにきたんでしょ?異国に来て心を解放させてあげないとまたいつか辛くなっちゃうよ。俺の前で泣いたって忘れちゃうからいいじゃん。」
「…」
「頑張らなくていいんじゃない?泣いて心を休ませてあげなよ。自分をもっと大事にしてあげて。」
うん…うん…
また涙が出てきた。
彼はずっと私の背中をトントンしてくれる。
だんだん嗚咽が漏れてくる。
声がどんどん大きくなり、しゃくりあげてしまう。
彼のシャツを私の涙でどんどん濡らしてしまう。
でも涙を止めることができない。
この半年、こんなに泣いたことはない。
悲しいけれどやらなければならないことが多すぎた。
悲しんでばかりではいられなかった。
2人の死を受け入れられない自分もいた。
どれだけ泣いていたのだろう…
やっと心の底から2人の死を悲しみ、声に出すことができたのかもしれない。
私はヒック、ヒックとまだ嗚咽が止まらないでいる。
そんな私の背中を変わらずトントンしてくれていた彼が小さな声で「君はひとりぼっちじゃないよ。」というのが聞こえた。