キミだけは推さない、!( º言º)
アキラは覚えていない。
「こっちのお肉、焼けてるよ」
「……うん」
あれはまだ俺が6つの頃。
うちの別荘でバーベキューをしたとき、アキラは両親と参加していた。
あの頃のアキラはサラサラの長い髪を揺らす天真爛漫な美少女だった。
天使のような彼女に
当時引っ込み思案だった俺の心は奪われたんだ。
「名前なんていうの」
「……ななせ」
「ナナちゃん?」
「……ちゃん……」
「かわいーね」
あのとき、アキラは
あろうことか俺のことを女児だと思っていた。
元々ガキの頃の俺は
中性的な顔立ちをしていた。
どこに行っても女みたいだと言われていたから、アキラが勘違いするのも仕方なかった。
それでも
母さんの趣味でボブカットに整えられた髪とジェンダーレスな服装をしていなければ
アキラの目に俺が女の子として映ることはなかったかもしれない。