この恋は狂暴です
次の日の朝。教室へ入ると、なぜか女共が騒がしい。  

ン?
なんだ?泣いてる奴もいる。
と、そこへ
「薫くーん」 ななだ。  
「あ?なに?」 顔も向けないで返事をすると、ななは

「乃野さんとのコト、ホントだったんだね。
・・この間は、俺じゃないって言ったくせに。」

ななにしてはやけに絡むなぁ。

「なにが言いたいのかな?ななは?」 と顔を近づけてみる。
案の定、真っ赤に顔を染めて慌てるなな。

そうだ。俺は別に畑野さんだけじゃなく、誰に対してもこういう意地悪をしたくなるんだ。
姫様だけが特別じゃないんだ、そうだ
絶対に。

「か、薫くんっ・・の、乃野さんとキスしてたでしょ」
「?!」 
あ、見られてたワケね。でも
「そんなの珍しくないだろ?なんなら、ななにもしよっか?」 とさらに顔を近づけていく。

ななはそこで倒れてしまった。真っ赤な顔して(笑)

そう
誰とキスしようが関係ねぇし、今までだって気にするコトじゃないはず。
なのに、今回のこの騒ぎはナンだよ 

・・・ ウザ ・・・


「人気ものはつらいね~♪」
後ろから、桃弥がニンマリして近寄ってきた。

「桃弥」

「ちょっと顔かして、薫。」
そう言って俺を屋上へと誘った。

「・・・・・」

「・・ー・・はぁ」
長い沈黙を解いたのは桃弥だった。

「桃弥、悪ィ。」
俺は謝ることしか出来ない。

「薫、オメー気にしすぎっ!」 桃弥はニカッと笑って言った。
 
「き、気にするだろ!どうしても この状況は」
そんな俺を見て桃弥は、
「ふ―――、それは薫にとっても想定外の事だったんじゃね?  どうせ薫は、俺の為に姫から彼氏とかの存在を聞きだそうとしてくれたんだろ?」
「?!っ!」
「なのに、どうしてか、姫と付き合うコトになっちまったってトコだろ?」

「?????!!!桃弥っ!?あの時、側にいたのかっ??」
あまりにその通りなんで、俺は驚いた。

「ば―――――か!」
「へ?」

「これでも誰かさんの親友ですから!」桃弥はそう言って、いつもの笑顔になる。

「――――― っ・・桃弥。
・・サンキュ ・・でも、結局、ごめん」

いつまでも顔をあげない俺に、桃弥は
「正直、ショックだった。」
「!!」その言葉に俺は思わず顔を背ける。

「あの姫が
・・OKするなんて思わなかったから。」

「俺も・・」 つい言ってしまう。 
だってホントにそう思ってたから。

「だから姫はマジなんだと思った・・」      (へ?)
真剣な声で桃弥は続ける。
「薫はそうでもないかもしれないけど、姫はたぶん・・本気で薫に惚れてる」   (は?)
話の見えない俺には、桃弥が何を言ってるのかが解らなかった。  頭が混乱する。

「ちょ、ちょっと待ったっ!何言ってんの桃弥?!」
限界な俺が叫ぶ。


「・・今まで、姫がOKしたの聞いた事がない。俺らのガッコの奴らは別として、姫は有名だったから他校の奴らから、ひっきりなしに誘いがあったんだけど、誰1人として成功したなんて聞いてない。
まぁ、多少、俺らがジャマしに入ってってのもあるんだけど(笑)
だから今回は、マジでびっくりしたっていうか・・
姫、もしかして最初っから薫のこと好きだったんじゃないかな?って。
どうしても思ってしまう。」

?????(んっ???!)
「あ、あのさ、悪ィ、桃弥。 その好きかどうかってのは俺にもよくわかんねーけどさ。その・・・畑野さんって
ほんっ―――とに今まで、誰とも付き合った事ないワケ??」
「?・・ああ。てか、前にも言ったよな?」

―――あ、ああ
で、でもさ、そんなことって信じられるかっ?――――――― ・・って!

え ――――――――――――――っ!!

じゃやっぱり、あの時のキスって!畑野さんファーストキスだったりするわけっ?!
あっ!!だから、あんな反応したのかっ??
い、
いや・・やっぱわからないぞ!桃弥たちがわからないだけで、実は裏で付き合ってた奴がわんさか居たかもしれないしっ!!なんたってあの姫様だしっ!

バッと桃弥と目があった!

「はぁ―――――――――――――― っ。俺らの情報網をなめるなよ?裏でコソコソ付き合ってた奴も居ない」
「―――――――――――――――――――― っつ!!なんでわかったっ?!」
「薫は俺の前だと正直だよな、ぷっ。顔にモロ出てるし!女共に見せてやりてっ♪」
桃弥は笑いを堪えながら言った。
(うっ・・・たしかに桃弥の前だとつい気を緩めてしまっている。俺の素を知ってるのはこの学校では桃弥だけだし。)

「・・くやしいけどさ、なんたって薫はイイ男だし!姫が惚れるのもわかるーっつかさ――――――てかっ!!」
桃弥が突然、何かを思い出したみたいで俺に顔を近づけてきた
「な、なんだよっ!?桃弥?」
ジリッっと後ずさる俺。

「いいよな―――――――――――っ!!姫とのキスっ!くぅ―――――っ俺もしてみて――――っ!!」
「!!と、桃弥ッ?壊れてんぞ??!」
「は?いいんだよっ!チクショーっ羨ましいぜっつ!!薫、俺とキスしてっ!姫と間接キスになるだろっ!薫――――っ♪」
「おまっ!変態かっつ!わっやめっ」
絡んでくる桃弥に俺はマジで抵抗した。


――――――――が、・・結局唇は奪われてしまった(うえっ)
チクショー桃弥の奴、絶対に俺に対する嫌がらせだっ!まったく・・

「・・ふ。だけど
やっぱイイ男だよな。桃弥は。俺なんかよりずっと・・」
家に帰って口を濯ぎながら、久しぶりに今までどおりの仲に戻れたカンジがして
俺は桃弥に感謝した。

しっかし
あの姫様が俺に惚れているなんて考えられないぞ?
どう考えても、彼女は俺の外見では落ちない。

何かある。   

俺は直感した。

今まで誰のものにもならなかった女が、いきなり見ず知らずの男に惚れるか?
ありえない。
彼女だったらもっと慎重になるハズだ。
それに、どっかで聞いた事のある名前にも違和感が残る。

「あークソわかんねっ!」
口だけじゃなく、顔も洗って部屋へ戻った。



そう、その時はまだ、
何も気づいてなかったんだ
畑野さんの心の中にいた俺の存在を。  

その想いを。
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