この恋は狂暴です
次の日、廊下で畑野さんを見つけた。
彼女もこっちに気づいたらしい。
だがすぐに、目をそらされてしまった。

ぷっつーん

「いい度胸じゃん」

俺はすかさず、畑野さんに近づくと腕を掴んだ。
「なっ!!」
思いもよらない俺の行動に、畑野さんはビックリした顔を見せる。
(ヤバイっって!なんでこいつの顔を見ると、俺は!どうしようもなく苛めたくなるんだっ?!)

いつもと違う
俺自身、もう歯止めがきかなくなっていた。

「何すんの?離して!」
目力のある瞳を向けて睨む畑野さん。     
でもその語尾は小さく、声に強さはない。
俺は、それをすぐに読み取ると、畑野さんの腕を引き寄せ顔を近づけた。

「っつ!!」 畑野さんはビクッっと体を強張らせた。
「俺ら付き合ってんでしょ。ヒデー言われようだね」 耳元でそう言うと、周りの女共の悲鳴があちらこちらから聞こえる。
そんな事は気にせず、俺は畑野さんの耳元でさらに呟く。

「今から、しよ」 小さい声だが、耳元で囁かれてる畑野さんには聞こえたハズ。

「!!っつ」 うつむく畑野さん

何も言わない畑野さんを見て、俺はまたゾクゾクしてしまったんだ。
その腕を強引に引っ張って、屋上へと向かった。



「何も言わないって事は、OKってコトだよね?」
俺は意地悪く言った。
その言葉に畑野さんは、ビクッとして顔をあげ・・た?!
「うっ!!」
そ、その
・・っ畑野さんっ、顔、真っ赤なんすけどっ?!


プチ 

あ、やべっ
スイッチ入ったかも。


ギュッと塞がれた唇を強引に舌でこじ開ける
唇と舌を交互に舐めまわし、舌をさらに奥へと絡ませる
「っんっ・・・」 苦しそうな声が漏れる

キスになれてないんだな。やっぱり畑野さんってキス初心者?

かわいい・・

そう思いながらも舌の動きは止めてやらない。
泣くまで止めない。

そして俺はキスを続けながら目をそっと開けた。
畑野さんの瞑られた目じりに涙が溜まってる

(ふ・・合格)

それを確認した俺は、唇を離した。

「けほっ・・っ」 息の仕方がわからないらしい彼女は苦しそうに咽てた。

でも、そんなんじゃまだ許さない。おさまらない

今度は首すじに舌を這わした。 「っっ」 畑野さんの体がビクッと反応する

それがたまらないっ!もう止められないかもよ俺。

畑野さんの制服のボタンを外しかけた時、
「・・薫は・・っん、わ、私のことっ・・っ」

その後に続く言葉はわかっている。

好きなの?とか愛してるの?とかのたぐいだ。
ほとんどの女はそんな言葉を求めてくる。

今回も同じだ。

「何?」 俺は面倒くさそうに聞いた。

「おぼえてる・・の?」



「ー・・・・・は?!!」
 
おもわず畑野さんから体から離した!まさかそんな言葉がくるとは思ってもみなかったから


「えーっと?!」  思考停止状態の俺。

「はぁっ。」 そんな俺に気づいたのか、畑野さんはため息をついた。
顔はまだ真っ赤だったが、瞳は力を取り戻していた。

「やっぱり、おぼえてないんだね。 だから、こんな事、平気で出来たんだ」

え?
ワケわかんね、俺のコトを前から知ってた?
いつ、どこで?畑野さんと会った?

「いっぱい女の子と遊びすぎてるから、いちいちおぼえてるワケないよね」
畑野さんはイヤミたっぷりに言った。

「今は平気で、あたしの事、泣かすくせにっ!―・・なんであの時はっ・・・」
そう言いかけて畑野さんは涙を拭った。

俺、 ・・何かしたの? 
畑野さんに? 今の事ではないみたいだし、え?いつのコト?

「あの・・さ」 俺は耐えられず、話かけた。彼女が何を言いたいのか知りたかった。

だが、畑野さんは、
「ばか!薫っ!大キライっ!!!」 そう言って一発殴られた!
しかも、グーで!     マジで女かよっっ!

「っつてぇ・・・」
俺が頬に手をやると、畑野さんは目を逸らして屋上から出て行ってしまった。

結局、さっきの言葉の意味はわからないままで。


畑野・・
乃野
はたの  のの  
はたの・・ 乃・・野
畑野・・の・・

だぁ――――――――――――――っつ!!!
わかんねぇ―――――――――――――――――――――っつ!!!!

少し赤くなった頬をさすりながら、俺は部屋にこもり畑野さんの事を思い出そうと必死になった。

今の事を言ってる感じじゃなかったから、
過去だよな・・

高1?の時?
・・それとも中学・・か?
女がらみのもめごとだったら、どっちもアリだし。

・・畑野さんは、桃弥と同じ中学だったから 
水崎中 ・ ・ か。
俺の中学とは少し距離があるけど、行かれない距離ではないよな。

う ―――――――― ・ ・ ・ ・ ・ん

やっぱ、わからない。
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