生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
“レザルスは執事か祖父か?“

その問いの答えはどちらも”否"だった。

レザルスはお隣に住む65歳男性。

スチュアート家の家屋をメンテナンスする大工さんのような、用務員さん?のような職業らしい。

別料金で調理や洗濯、掃除もしてくれている。

なんと、あの執事の衣装は彼お手製の作業着だったのだ!

ロゼレムとレザルス、両者の間には主従関係はなく、あくまでも賃金を払って雇い入れているという契約関係だそう。

じゃあ、なんで”ロゼレム様“と呼んでいたのか?

それは、ただ彼の趣味、いわゆる”執事”ごっこの一環だったらしい。

服装もそう。

この国というか、領というか、ハルルが住む地域には身分というものは存在しない。

しかし、他国からもたらされた書籍から外部の状況を知ることはできるようで、レザルスの言葉遣いと服装は他国の現状に憧れた“オタクの趣向“といったことらしい。

この世界は、色々なところが前世の日本と似ているようにも感じるが、実際はもっと未分化で、古き良き時代が近代風に進化してきたといった具合。

物やお金を奪い合って戦争を起こすといった概念はなく、なんでも話し合いで解決しようとする、そんな優しい種族の集まりらしい。

四方を海に囲まれた孤立した地形。

余り多くはない人口の割に豊富な資源と食材に恵まれた土地。

他国からの侵略を受けずに来られたのは奇跡のようだ。

って・・・。

3歳のハルルがこの情報をどこから仕入れたか、気になりませんか?

もちろん一番何も考えてなさそうなお父様からでーす。

3歳児が急に周囲に関心を示し始めれば怪しまれる。

だから、慎重に、慎重に、お父様の懐に入り込みながら情報収集を重ねているのです。

まずは第1段階、お父様とお昼寝することで敵地に乗り込むことにした。

ミシェルには

"どうして僕とお昼寝してくれないの?"

と泣きつかれたけど背に腹は代えられない。

”ごめんよ、おばちゃんには野心があるのだよ”

前世25歳+3歳のハルルは、イケショタの可愛らしさに後ろ髪をひかれながらも、お父様とのお昼寝を満喫する(フリだけど)方を選んだ。

お昼寝は、父親が無防備に情報を曝け出す絶好の機会なのだ。

3歳児がお昼寝からなかなか起きてこなくても、大人は大概そのまま寝かせておいてくれる。

そうやって寝た振りを続けていれば、そのうちにお父様は仕事に戻っていく。

そうなればしめたもの。

ハルルの探検開始だ。

ロゼレムの書斎にはこの国の成り立ちや歴史を語ってくれる本がたくさんあった。

読書それは情報収集のチャンス。

転生チートなのか難なく文字が読めたハルルは前世の速読スキルを活かして短期間で書斎の本を読破した。

伊達に10年も引きこもりニートをやってはいない。

本は心の友だったのだ。

たまに、お父様が部屋で仕事をする時は、寝た振りをして父と仕事相手との話に聞き耳を立てる。

周囲の大人は、3歳の幼女が会話の内容を理解しているとは思わないから無防備に内緒のお話もしていた。

こうして、ハルルは必要な知識と情報を順調に身に付けていく。

近い将来、来るのか来ないのかわからない災いに対処するために・・・。


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