生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「ねえ、ハルルはいつまでお父様と一緒にお昼寝するつもり?」

ハルルが前世の記憶を取り戻してから早2週間が過ぎた。
 
ミシェルの我慢はとうとう限界に達したらしい。 

ミシェルは重度のシスコンだった。

ハルルと片時も離れたくないと言ってはばからない。

とはいえ、夜はハルルと一緒に眠っているし、お昼寝以外はいつも一緒にいるというのに。

ハルルは眉を寄せて、

「だって、おとうたま、さみしいってなくもん」

と、幼女らしく困ってみせた。

事実は情報収集が目的のお昼寝なのだが、忙しい父にとっては唯一の愛娘との大切な時間。

たったそれだけのふれあいではお父様が満足していないのも事実だった。

「泣けばいいの?」

ハルルが振り返ると、ミシェルは美しい蒼碧の瞳に涙を浮かべてポロポロと泣き出した・・・!

天才子役も真っ青な即泣きだ。

これにはロゼレムも困惑したようで、

「ああ、私が悪かったよ。ミシェル泣かないで」

と、ハルルをミシェルから取り上げて執務室に連行しようとしていたロゼレムだったが、申し訳なさそうに身を屈めるとハルルをおろしてミシェルを抱きしめた。

父ロゼレムは、ハルルを溺愛しているが、同時にミシェルも溺愛している。

「それなら、ミシェルもハルルと一緒に私とお昼寝を・・・」

「いいえ。僕はお父様のことも心配なのです。お忙しいお父様の邪魔をするわけにはまいりません。このところお父様のお仕事が滞っているとお母様が嘆いておいででした」

悲しそうなミシェルの言葉に、ギクっと、ロゼレムが肩を震わせる。

事実、寝ているハルルの寝顔に呆けてばいる時間が長くなり、この2週間でロゼレムの仕事は地味に蓄積し始めていたからだ。

ミシェルの言葉遣いや心遣いは、決して5歳児の使うそれではないし、地味にロゼレムを責め立てているようにも聞こえる。

「で、でも、私にも癒やしが・・・」

「お父様、やるべきことをやってからこそのご褒美ではないのですか?」

“涙目“からの〜“天使の笑顔“コラボレーションに、ロゼレムはグウの音も出ずに固まった。

「では、僕がハルルを引き受けます。さあ、ハルル行こうか?」

「あい」

しょんぼりと俯くお父様が可哀想。

だが、ハルルの策略とはいえ、娘にうつつを抜かして仕事をないがしろにするのはやはりロゼレムが悪い。

“もう、必要そうな情報はあの部屋からは取り終えた“

ハルルは利用して申し訳無く思いながらも、俯くロゼレムに手を振りながらリビングをあとにした。



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