生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「ハルルはこの島を出たいの?」

「まさか。こんなに平和で穏やかな島を捨てて出ていくわけないよ。きっと一生独身だね」

ミシェルへの想いは抜きにしても、これもハルルの本心である。

ハルルは今世で手にしたこの穏やかな幸せを手放したくはない。

だからこそ、できうる範囲の防衛策を取ろうとこうして足掻いているのだから。

「僕のハルルは他の誰にも渡さないよ。もちろん島からも出さない」

チュッと唇すれすれの頬?にキスをして抱きしめるミシェルに、ハルルの心臓は今にも破裂しそうなほど音を立てる。

しかし、毎度のことなので何とか動揺を隠すことができた。

「もう、兄妹のイチャイチャなんて見てらんないわ。ミシュったらいい加減妹離れしなさいよ」

「心配しなくてもカノンにはこんなことしないよ」

「頼まれても勘弁だから結構よ。それより、お父様が話があるらしいわ。ハルルもすぐに帰る準備してちょうだい」

”家庭科の申し子”メリルの私室となりつつある調理場からノッソリと出てきたカノンと、ハルルを抱きしめるミシェルの睨み合いが始まる。

これも毎度のことなので友人達は誰も驚かないのだが、今日はスチュアート兄妹の父ロゼレムからの呼び出しが入り、早々に切り上げられるらしい。

兄妹喧嘩が長引かなくてホッとしたハルルだったが、ミシェルに肩と腰を抱き寄せられ不要なドキドキがおさまらない。

「ハルル、抱っこしようか?」

「もう、子供扱いしないで」

多少過剰とはいえ、いつもと変わらない兄とのやり取りにホッとしている自分もいた。

しかし、このあと、そんな微妙な均衡を揺るがす出来事が待っているとは、兄とのイチャイチャに浮かれるハルルが知る由もなかった。


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