生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
バタン。

ハルルの部屋の扉がミシェルの後ろ手によってゆっくりと閉じられる。

先に部屋に押し込まれた形のハルルは、ベッド脇に座り込む状態で、オドオドとミシェルを見つめて呟いた。

「ミシュ、私を年頃の女の子扱いするなら、たとえお兄さんだからといって、密室で年頃の男女が二人きりになるのは良くないと思うな〜」

「ふぅん、そんな余計なこと、誰がハルルに入れ知恵したのかな?・・・ハウル?」

「まさか、ハウルとはさっき話をしたのが初めてだよ」

「・・・ハウル?もう呼び捨てするほど仲良くなったの?油断も隙もないな」

いや、

つい、無意識に呼び捨てにしてしまっただけなのだが、これは前世の波瑠の記憶によるところが大きい。

ケモミミ獣人が登場するのは、たいていファンタジー小説かゲームの中。

そんなキャラクターに様付けするほど
のめり込んではいなかった波瑠は、たいてい呼び捨てでキャラを批評したり、脳内会議に出演させたりしていたのだ。

「それで?ハルルは年上のハウルと恋愛するつもりなの?」

いまだに昼間の発言を根に持っているらしい。

素早くハルルの隣に腰掛けたミシェルの唇が、ハルルの耳元をかすめて甘く囁く。

完璧超人ミシェルは、声までも人気声優も真っ青なくらいのイケボなのである。

”まじ、孕むからやめて欲しい”

「うっ・・・」

「ねえ、ハルルが一番好きなのは誰?そしてハルルを一番好きなのは誰だったかな?」

「お兄様です」

「・・・」

「ミシェル」

「正解」

チュッというリップ音と共に、ミシェルの唇がハルルの唇の端ギリギリにキスをした。

「そんな格好で髪が濡れたままじゃ風邪を引くよ?僕が乾かしてあげる。明日からは僕がお風呂の送り迎えをするから」

嬉しそうに立ち上がり、ドライヤーを持ってきてハルルの髪を乾かすミシェルはシスコンの極みといえよう。

年上イケメンハウルの登場が、益々ミシェルの過保護に輪をかけていく。

早々にミシェルに恋人かフィアンセを充てがわなければ・・・と焦りを感じるハルルに明日はあるのか?

「前途多難だな」

そう呟くハルルもまた、天井を仰ぐのだった。

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