生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜

阿吽

その頃、島(本来の領土名はスチュアート島という)では、ミシェルが体調を崩し始めていた。

「ミシェル、いきなりどうしたんだ?」

胸を抑えて苦しそうな息をし始めたミシェルに、ショーン、マイケル、メリル、双子のそれぞれの父らと会談をしていたロゼレムが焦りながら駆け寄った。

「ハルルが、島から出たようです・・・」

「何?ハルルが?ハウルが護衛に付いていたはずだろう、なぜそんなことに」

動揺するロゼレムにますます苦悶様となるミシェル。

誰もが膨らむ不安を胸に立ちつくしていた。

「っ!・・・申し訳ない」

そこへ、空間から突如応接の間に現れた青年、それがハウルだった。

「みすみすハルル様を拐われてしまい本当に面目ない。俺のことは後でいかようにも処分してもらっても構わない。だが、今は誘拐犯を捕まえることが先決だ。奴の顔はしかと覚えている。あれは、ハルト王子の側近、王族お抱えの魔術師ルグランだった。あいつには他にも借りがある。勝手な申し出だと重々承知しているが、どうかハルルを救出するまでは俺に猶予が欲しい」

必死なハウルの様子に、ロゼレムも仕方がない、と険しい表情を緩めた。

「なんと、ハルト王子の噂は本当であったのか。王都一の魔術師ルグランを寄越すとは何と厄介な」

ハウルも優秀な魔法使いであり騎士でもあるのだが、そもそもルグランの魔術は別格であった。

このことからも、この場にいた面々は間違いなくハルルは本気で誘拐されたのだと確信を得た。

全ては次期国王、ハルト王子の野望を満たすための道具として・・・。

< 38 / 88 >

この作品をシェア

pagetop