生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「いたかった?みしゅ」

ようやく我に返ったハルルは、少しの反省とともにミシェルの上半身を抱き起こそうと奮起した。

しかし、3歳児のハルルにそのような腕力があるはずもなく、あえなく断念。

5歳児にして“完璧天才少年”の通り名を持つミシェルは、自らスマートに半身を起こすのだった。

「ううん。むしろハルルに抱きついてもらえて役得だよ?」

”くーぅ、イケメンかよ“

二度目のカウンターパンチに目を見開いたハルルだったが、5歳児に負けてはいられない。

こちとら見かけこそお世辞などわからない3歳児なのだ、言葉通りに解釈させてもらい存分に甘えようではないか。

「はるるもみしゅとだっこ、しあわせ〜」

と、この状況に便乗して彼の胸にダイブした。

中学を卒業してからの10年間、完全な引きこもりニートであった波瑠からすれば、イケメン少年(5歳児だが)とのイチャイチャはご褒美でしかない。

「ハルルは可愛いね」

後頭部を撫で撫でしてくれるミシェルは、おそらく無自覚の褒め殺しアサシン(刺客)に違いない・・・。

そんなことを考えているハルルは、未だに前世の被害妄想から抜け出せていないのかもしれないのだが。

ハルルの現実逃避を余所に

「ところで何を見てたの?」

と、ミシェルが問う。

「ん?あのおにんぎょう・・・」

ハルルは我に返り、兄の質問に答えるべく、泣く泣くミシェルの胸から顔を離したのだが、

「どれ?」

ミシェルはハルルの言っていることがわからないとでも言うように首を傾げた。

同時にハルルも首を傾げる。

ハルルの指さした先には、一本の小さな木がひっそりと植えられていただけだったから。


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