生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
ハルルはミシェルから離れ、ゆっくりと石像があった場所に向かい合った。

そこに差し込んでいた光すらも消え、あるのはハルルの背丈ほどの木だけしかない。

さっきはなかったはずのその木には、よく見ると根元の部分に何かの印のようなものがある。

「・・・ハルル!だめだよ」

「えっ?」

その印を良く見ようと、覗き込んで思わず手を触れそうになったハルルを、珍しく慌てたミシェルの声が遮った。

ビクッとしたハルルに対し、ミシェルが慌てて取り繕ったような笑顔で言った。

「大きな声を出してごめん。その木はとても神聖な木なんだ。触れてはいけない」

“いわゆる神木というものか”

ハルルは、そう言えば波瑠が住んでいた家の近所にもあった、となんとなくだけど納得した。

前世の神木には、締縄はされていたものの参拝客が触れてもいいように一部開放されていたような気はするが、その常識がこちらの常識と合致するとは限らないので受け入れるしかない。

「ごめんなしゃい」

よくわからないことには、それ以上触れないに限る。

「はじめに教えなかった僕が悪いんだ。こっちこそごめんね、ハルル」

そう言って優しく抱きしめてくるミシェル。

彼はハルルが生まれたときから、いつも従順な騎士のようにハルルを甘やかしてくれる。

そんな彼を前に、意図せず異世界転生をしてしまったであろう波瑠改めハルルは、少しだけ神様の存在を信じてもいいかな、と思い始めるのであった。


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