生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
ミシェルがハルルと共に島へ帰還したその頃、取り残されたハウルとルグランは、剣と杖を突き合わせて向かい合っていた。

「ハルルをどうするつもりだった?」

「護衛対象から目を離し、その隙にまんまと姫様を拐われるような間抜けな騎士になど教えて差し上げることは何もありませんよ」

相変わらず人を見下したような態度のルグランにハウルの怒りゲージが上昇していく。

但し、この男にまんまとハルルを拐われたのは事実であってハウルの落ち度である。

そこは悔しくても認めるしかない。

「教えてもらえなくとも大方の予測はついている。ハルルを奪還した以上、俺がここに長居する理由も、お前と戦う理由もない。帰らせてもらう」

剣を鞘に収めたハウルは、漲る戦意を打ち消して転移の詠唱に集中し始めた。

「私も初めからあなたには用はありません。勝手に押しかけたのだから勝手に帰ればよいでしょう。今後はせいぜい大切なお姫様から目を離さないように。まあ・・・この別荘を探し当てた手腕については多少評価してあげなくもないですがね」

ハウルの詠唱の邪魔をするように余裕な素振りで振る舞うルグランが憎らしい。

「お前こそ、せいぜい人を見る目を養うことだな」

転移する寸前に口にしたハウルの渾身の嫌味に、ルグランが片眉を上げたのが見えた。

「ほう、あの貧乏男爵が情報漏洩の犯人だったのですね・・・骨がありそうに見えたのに残念だ」

ハルルとミシェルにとっては、偶然とはいえ貴重な情報をくれたあの酔っぱらいヤナックには感謝しかない。

しかしルグランがうっかり野郎のヤナックをどうしようと知ったことではなかった。

“せいぜい節穴だらけのその目に落胆して、完璧だと思っている己自身のプライドをズタズタにされればいい“

ハウルは戦わずして敵前を去る自分を恥じながらも、ミシェルがあっさりハルルを奪還したことで、かろうじて一矢を報いることができた、と自分自身を鼓舞するのであった。


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