生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「みんなに黙ってどこに行っていたんだい?とても心配したんだよ。私の愛しいハルル」

ミシェルに連れられて自宅に戻ったハルルは、玄関先で待機していた父ロゼレムに抱きかかえられて固まった。

”そういえばお父様もミシュ同様、激あまだったわね“

父に抱えられたまま、ハルルはそっと眼下のミシェルに目を向け、気づかれないように苦笑した。

似た者親子なのだなとハルルが思考を飛ばしていると、

「ねえたま、いないいない、だめ」

と、母に抱かれていた妹カノン2歳が目の前のハルルに手を伸ばしていた。

”可愛いのリーサル・ウェポン“

“こっちもマジやば天使”

ハルルの妹カノンはミシェルと同じ銀髪に蒼碧の瞳を持つ美幼女で、彼女もハルルによく懐いていた。

一方のハルルはブラウンのくせ毛で瞳もブラウン。

美しいというよりは可憐な外見だ。

父ロゼレムは金髪で翠眼なのでハルルは家族の誰にも似ていない。

前世を思い出すまで、ハルルは3歳児の知能と知識しか持ち合わせていなかったから、家族の外見なんて気にもとめていなかったのだが、遺伝の不思議とはなんとも難解である。

まあ、そんなことよりも、なぜ黙って森に近づいたのかを責められている現状が問題だ。

「ごめんね、おとうたま、かのん」

窮地に陥った時は、とりあえず謝っておけばうまくいく。

これはたった3歳のハルルが見つけた、スチュアート家の常識だ。

「あらあら、みんなでハルルを責めないの。人はそこに森があれば入りたくなる生き物なのよ」

予想通り、母マリリンがハルルを擁護してくれた。

”そこに山があるから登るのだ“

前世で、とある登山家が言った有名な言葉を思い出すが、異世界人のマリリンが知る由もない。

ハルルは前世の記憶と今世の記憶がごちゃまぜになっている脳内を整理しながら、表面だけでも悲しそうなふりをして反省の色を見せることにした。

「ハルル、森には猛獣がいるんだ。二度と近づいてはいけない」

真剣な顔でロゼレムが囁く。

「嘘はいけませんぞ、ロゼレム様」

すると、すかさず執事?のレザルスが横槍を入れてくる。

「お父様、そんな嘘はすぐにバレます。ハルルに嫌われてしまってもいいのですか?・・・ねぇ、ハルルは嘘つきは嫌いでしょ?こっちにおいで」

間髪いれずにツッコミを入れ、ハルルに腕を伸ばしたミシェルの優しい微笑みに、ほんの少し愉悦の色が浮かんでいるのは気のせいだろうか。

「す、すまん。ハルル、森に猛獣なんていなかった。お父様を嫌わないで」

慌てて謝罪を口にする父はちょろい。

ハルルは内心、同情しながらも体を捻ってロゼレムの腕から降りようとした。

「ハ、ハルル。もう嘘はつかない」

離れていくハルルに、涙目のロゼレム。

申し訳ないが、ハルルは涙目のイケオジよりも策士の美少年の方が好みだ。

ためらわずにミシェルを選ばせてもらうよ。

「ウソつきは、やっ、だよ」

「そ、んな」

世界の終わりのような表情をする父。

そして、そんなやりとりを微笑んで見守る家族。

スチュアート家は、色々あっても今日も平和だった。



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