生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
思っていたよりも複雑で、hard&Heavyな世界に暮らしていたのだと気付き、ハルルは気が遠くなった。

「ハルル、大丈夫だよ」

倒れそうになるハルルの細い体を支えたのは安定の溺愛甘やかしミシェルだ。

背の高いミシェルに抱きしめられる時はいつも、小柄なハルルの頭は彼の腰のあたりにおさまっていた。

しかし、昨夜のベロチュー・・・こほん、阿吽の儀式を終えて、予定外の急成長を遂げたハルルは、今、ミシェルの肩付近に顔を埋めることになった。


大人の男女のラブシーンの様な状況に戸惑い、ハルルの頭は一瞬にして別の疑問に占領された。

「そ、そうだ。私、どうして髪と瞳の色が変わったのかな?それに身長だって伸びてるし」

顔を真っ赤にして、ミシェルの胸を押し返し、誤魔化そうとしてミシェルに遮られた。

「真っ赤なハルルも可愛いね。僕のこと意識してくれてるのかな?」

ハルルの質問を全く無視したミシェルに戸惑うハルルだったが、

「これまでハルル様には封印の魔術がかけられておりました。成長は封印が溶けるまでの間は12歳で止まります。そのためハルル様の膨大な魔力も制限され、様々な悪意から身を隠していたのです」

という、お固く真面目な男性レザルスから答えを回収した。

体調を崩していたという、彼の突然の登場に関してもだが、彼の言動にはツッコミどころが満載である。

封印の呪いの正体も気になるが、12歳で止められていた体とはいったい?

身長と体重こそ小柄とはいえ、それなりに女らしく成長していたはずのハルル。

子犬みたいだと、そこそこ満足していたというのに、あの姿は12歳で止まっていたというのか?

まともな思考なら、先に封印の魔法にこだわるはずなのだが、いかんせん斜め上思考のハルルである。

彼女は違和感満載の自身の身体の方が数刻前からずっと受け入れ難かったのである。

ハルルは改めて改造?された自分の身体を眺めた。

ミシェルに抱きしめられて潰れている胸はグラビアモデル並みに豊満、それなのに腰は細くクビれ、手足は細長く白い。

そう、これはいわゆるリア充だけが持つ“煌めきボディ“だ。

“こんな3次元的幸せ求めてないよ“

前世の波瑠は、引きこもりニートであったため2次元推しで3次元には無関心だった。

そのため、世にいう2次元的美形男女の造形には疎かった。

前世も今世も、実はかなりの美少女であったことには本人だけが気づいておらず、成長を果たした今も、髪と目の色が違う以外はあまり大した変化をしていないことが理解できていない。

違和感があるとすれば、前世はかなりの偏食であったため今より随分痩せていたため、胸にまで栄養がいってなかった点だけであろう。

健康な今とは多少?の変化が出ても、他人としては予想の範疇なのだ。

「髪と瞳の色、体重以外はほとんど前世のハルルと変わっていないよ?」

「何でミシェルが前世のわたしを知ってるの?」

前世という言葉に反応するハルル。

「ずっと見てたから」

「え、ずっとって・・・どういう意味」

ミシェルの言葉に疑問を投げかけようとしたのだが、隙を見せたがために更なるベロチュー攻撃を仕掛けられそうになるハルル。

「ちょっ、ミシェル」

戸惑うハルルと色ボケミシェルの攻防戦を遮ったのは、クールビューティーカノンではなく、以外にも見知らぬ第三者であった。

「波瑠ちゃん・・・」

「え?あ、あなたは・・・まさか」

初見のはずのハルルを、彼女は「波瑠」と確かに呼んだ。

ハルルが波瑠だったと知る者はこの世界にはいない(はずだ。ミシェルは知ってると言っていたけども)。

ハルルが振り向いた先に現れたのは、ハルルと同じシルバーゴールドの髪に榛色の瞳をした優しげな女性。

西洋風ながら、どこか懐かしさを感じさせる女性に、ハルルの胸は高鳴りを抑えることができなかった。

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