生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
今世における20年前。

当時、25歳だったロゼレムは王位継承権を放棄し、スチュアート辺境伯の爵位を賜りロゼレムスチュアートとなった。

その背景には王位継承権争いを避ける意図が大きかったのだが、一番はロゼレムの異父妹マリリンと甥のミシェルを守ることにあった。

ロゼレムの妹であれば、当然マリリンも現国王メンデルの妹である、と考える者が大半であろう。

しかし、好色家の王家の内情はそんなに単純なものでは語れない。

ロゼレムとメンデル現国王は異母兄弟。

当時、メンデル現国王は第1王妃の息子で、王太子であった。

ロゼレムはメンデルと同じ父を持つ2番目の王子というポジションではあったが、第2王妃、いわゆる側室扱いの子供であるため王位継承権は末席に位置していた。

ロゼレムの母親モリーは、王家に使える女官だった人だ。

モリーは由緒ある侯爵家の娘ではあったが、期間限定の行儀見習いとして王宮に上がっていたのである。

モリーは先王直属の騎士と出会い恋仲となった。 

結婚の約束も交わしていたのだが、ある日、モリーは先王に見初められてしまい無理やり二人の仲は引き裂かれた。

不本意ながら先王の側室に召し上げられてしまったのだ。

ほどなくして、モリーと先王の間にはロゼレムが生まれる。

しかし、一向に治らない先王の浮気癖に耐えられなくなったモリーは、3歳のロゼレムを置いて、元恋人であった騎士と駆け落ちを決意する。

二人が行方不明となって一年後、人知れずマリリンはモリー夫婦の元に生まれた。

モリーと騎士は田舎に逃れ、親子3人平民として幸せな時間を過ごしていたのだが、それも長くは続かなかった。

気が多い割に先王の執着は酷く、モリーを見つけ次第、モリーの夫である騎士は投獄され、モリーとその娘であるマリリンは城に連れ戻された。

モリーが抵抗しなければ、夫である騎士と娘マリリンの命は助けると言われ、彼女は泣く泣く先王に従った。

しかし、夫と引き離され次第に心労を重ねていたモリーは、ロゼレムが6歳、マリリンが2歳のときに儚くなってしまった。

残された幼いマリリンはそのまま王家の侍女として雇われることになったのである。

ロゼレムは異父妹であるマリリンを自分付きの侍女として召し上げることで悪意から守っていたのだが、日に日に美しくなるマリリンに目をつける者がいた。

それが現国王でロゼレムの異母兄メンデルだったのである(ややこしくてすみません)。

宮廷内を我が物顔に歩くメンデルの初恋はロゼレムの侍女マリリンだった。

執着心を受け継いだメンデルは、周囲に反対されながらもマリリンを第1王妃として娶った。

だが、気の多い性格も、アンデルビオン家の確固たる血としてメンデルに引き継がれていた。

好色家の先王の血を色濃く引き継いだメンデルは、その後次々と側妃を迎えると、あっという間に王子と王女を15人も誕生させてしまっていたのである。

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