生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「ハルル、お昼寝の時間だよ。僕と一緒にお昼寝しようね」

玄関先でのすったもんだのあと、ミシェルに連れてこられたのはハルルの私室だった。

ハルルは、キョロキョロと室内を見渡す。

野原に咲いていたであろう可憐な花を飾った花瓶、自分と同じくらいの大きさの茶色のテディベア。

寝具や壁はパステルカラーで統一されていて、なんとも乙女チックな雰囲気だ。

“前世とのギャップが激しすぎる”

ハルルは甘々な雰囲気の自室を過去と比較しながら、ぼんやりと立ち尽くしていた。

前世の波瑠はどちらかというと黒や茶色、グレーといったシックな色合いを好む女性だったと思う。

というか、いつも家にいたのでジャージかTシャツと短パンだったが。

両親という存在はいたが、波瑠が生まれたときから全く子供には興味がない人達だった。

小学校に上がるまでは“子守り”と呼ばれるおばあさんを雇い、その人が波瑠の面倒を見てくれていたが、それもお金がもったいない、と小学校に入学と同時に打ち切られてしまった。

おばあさんはとてもいい人で、思えばあの時までが、前世で一番幸せだったように思う。

おばあさんは常々言っていたなあ。

『強く願えばいつか願いは叶うのだから諦めてはいけないよ』

と。

「ハルル、どうしたの?」

部屋の入口でぼんやりと立ち尽くすハルルを見て、ミシェルが心配そうに問いかける。

そうだ、ここは現世で前世とは違う。

あの暗くて一人ぼっちだった前世とは違う。

ハルルは嬉しいような悲しいような何ともいえない表情で微笑みながらミシェルに抱きついた。

「はるる、ねむい」

本当はちっとも眠くなんてなかったが、押し寄せてくる感傷に耐えきれず、ハルルは今はただ、ミシェルの優しさに甘えることにしてその場をやり過ごした。


< 7 / 88 >

この作品をシェア

pagetop