生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
ベッドに横になり、ミシェルに抱きついた状態で目を閉じると、やはり3歳児の身体は正直ですぐに眠りに落ちた。

しかし、同時に、夢の中でも前世の記憶が気持ちを乱す。

冷めた表情の両親、あざ笑う同級生、無惨にいたずらされた学用品や運動具などなど。

誰一人味方のいない一人ぼっちの世界。

波瑠は味方のいないその世界を恨んだ。

”こわい、寒い、寂しい、辛い”

負の感情が心を蝕む。

引きこもれば誰ともかかわらなくて済む。

なのに、独りは寂しいと心が叫ぶ。

"なんて我儘で自分勝手なのだろう"

そんな思考に引き込まれそうになると、決まって聞こえてくるのが、別れ際に声をかけてくれたあのおばあさんの言葉だった。

『波瑠ちゃん、自分自身を信じなさい。そしていつか行動を起こすのよ。そうすればきっとあなたは救われる』

『嘘よ、おばあちゃん、呼んだって誰も助けになんか来ない。嫌われ者の私が簡単に変われるわけないじゃない』

困ったように微笑むおばあさんに手を伸ばす。

いつも後少しのところで届かない、それが現実。

そしてこれまでと同じように、おばあさんは光とともに消えていく。

そう、きっと今日も・・・。



「ハルル、ハルル!」

”あれっ?初めて手を掴めたぞ?"

ぼんやりとした視界とは逆に、はっきりと聞こえてくる声と掴んだ手のひらの温かさに、ハルルは驚きつつもゆっくりと瞼を開いた。

目の前には心配そうな兄ミシェルの、可愛くてなんとも美しい顔。

そこには焦燥が浮かんでおり子供ながらに艶かしい。

「どうしたの?みしゅ、なきそう?」

ハルルの言葉に、ミシェルが驚いて目を見開いている。

その様子がおかしくてクスクスとハルルが笑うと、ホッとしたようにミシェルが笑った。

「ハルル、うなされてたよ。天井に向かって手を伸ばしていたからどこかに消えてしまいそうで、思わず手を掴んだんだ」

そう言うミシェルの手はかすかに震えていた。

「こわいゆめみてたの、つかまえてくれてありがとう。みしゅ」

ハルルはそんなミシェルを安心させようと、いつものようにミシェルの手を抱きしめる。

だから、ミシェルの手に頬ずりをするハルルを見て微笑むミシェルの瞳が不安に揺れていることに気づくことはなかった。

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