その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
00.はじまりの朝
まぶたをうっすらと開けると、部屋を華やかに照らしている日の光が眩しくて、わたしは眉を寄せた。
ゴソ、と布の擦れる音がする。
何度か瞬きをした後に、思わず欠伸が出た。
……朝だ……。
じわりと涙が滲んで、ようやくそう理解した。
……喉、渇いたな。
まだ体の中に残る眠気に、とても起き上がる気にはなれない。
ごくりと唾を飲む。
けれど、それだけでは潤いを求める喉は誤魔化せないみたいだった。
……お水……。
開いたままの寝室の扉の向こうに見えるキッチンを目指して、しぶしぶ起き上がろうとする。
ベッドに腕をついて、微かに身を起こしたところで、——ぐっ、と止まった。
お腹のあたりが、拘束されている。
見ると、わたしの背後から伸びた腕が、しっかりと腰のあたりに巻き付いていた。
——おーちゃん。
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